CRISPR/Cas9を用いた遺伝子改変は、様々な遺伝子や細胞にノックイン・ノックアウトによる変異を導入できる強力なゲノム編集技術です。CRISPR/Cas9リボ核タンパク質(RNP)システムは、プラスミドやレンチウイルスに基づく他の遺伝子編集法と比較して多くの利点を有しています。
CRISPR RNPユーザーマニュアル
ターゲットゲノム編集のためのCRISPR RNPの使用ガイド
簡便な操作で、効果的なゲノム編集をサポートする、修飾を施した合成シングルガイドRNA(sgRNA)
実験にすぐに使用いただけるsgRNA
インビトロ転写やアニーリング工程の必要がありません
高いKO効率
トランスフェクションが難しい細胞に対してもお試しいただけます
実験のスケールにフレキシブルに対応
1~1000本以上のsgRNA合成2〜100+ nmolの収量
*2'-O-メチル、およびホスホロチオエート修飾が、安定性と編集効率向上のために、5'および3'末端の3残基に自動的に追加されます。
HPLC精製された高純度sgRNAがオフターゲットと細胞毒性を最小限に抑え、両末端の化学修飾も施されています。
細胞の生存への影響を、最小限に抑えることが可能
オフターゲットの最小化
CRISRPシステムからノックインテンプレートまでワンストップでの準備が可能
詳細はお問い合わせください japanmarket@genscript.com
CRISPR KI テンプレートについては、こちらまでお問い合わせください。japanmarket@genscript.com
CRISPR/Cas9システムでは、リボ核タンパク質(RNP)複合体の細胞導入法として、直接導入、あるいはプラスミド、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスの各ベクターによる導入など、様々な様式が可能です。RNPは、Cas9タンパク質とsgRNAまたはcrRNA+tracrRNA duplexのいずれか一方で構成されています。
sgRNAまたはcrRNA : tracrRNAがCas9タンパク質と複合体を形成することにより、gRNAの20 ntシークエンスに相補するゲノムのローカス部位(PAMシークエンス[5'-NGG-3']から3-4 bp上流)を二本鎖切断する活性を有するようになります。
Cas9とsgRNA とのRNPは、Cas9とcrRNA:tracrRNAとのRNPより安定であることを示した報告がある。
CRISPR/Cas9リボ核タンパク質(RNP)複合体は、従来のプラスミドやウイルスを用いた方法と異なり、細胞内でのタンパク質発現を必要としないインタクトな複合体として細胞導入されます。このため、以下に示す多くの利点が得られます。
最近、Cas9+sgRNAがCas9+crRNA:tracrRNAに比べて複合体として安定であり、高いゲノム編集効率が得られることを示した論文が散見されます1,2。また、これまでは、バクテリオファージRNAポリメラーゼを使用し、100 ntの合成sgRNAをin vitro転写(IVT)することが多く行われていました。これにより得られたsgRNAは5`-三リン酸を有しており、この修飾により、様々な細胞において免疫反応が誘発されるものと考えられていました。最近の研究では、実際にIVTにより産生された5’-三リン酸修飾sgRNAが、ヒトやマウスの細胞で免疫反応を誘発し、細胞毒性を引き起こすことが明らかにされています。一方、化学的に合成されたsgRNAは5’-三リン酸修飾がなく、高いゲノム編集効率を得られることが実証されています。このことから今日に至るまで、CRISPRシステムによるゲノム編集には化学合成sgRNAが最適であるとされています3。
CRISPR Handbook
CRISPR Ribonucleoprotein (RNP) User Manual
実験の精度を高め、ターゲットを確実にノックアウトするには3種類のcrRNAシークエンスを用意することをお奨めします。オフターゲット効果に対する予防策としても、個別のノックアウト変異体を作製することは有効です。
プラスミドやレンチウイルスによる方法と異なり、CRISPR/Cas9 RNPはインタクトな状態で細胞に導入され、さらに細胞内での発現反応などを必要としないなど、操作が簡潔なことから多くの利点が得られます。
sgRNAでは、crRNAとtracrRNAの場合に行う複合体形成のためのアニーリング反応は必要ありません。しかし最も重要な違いは、複数の研究で明らかにされている通り、sgRNAの方がcrRNA: tracrRNA複合体よりもCas9 RNPとして安定性に優れていることです。
1. Hendel, et al., Chemically modified guide RNAs enhance CRISPR-Cas genome editing in human primary cells. Nat. Biotechnol., 33 (2015) 985-989.2. Ryan et al., Improving CRISPR–Cas specificity with chemical modifications in single-guide RNAs. Nucleic Acids Research, 46 (2018) 2: 792–803.
従来のファージRNAポリメラーゼを使用したin vitroトランスクリプション(IVT)の場合、100 nt程度のsgRNA合成が可能でした。これらのIVT合成sgRNAは、5’-三リン酸を有しており、これが多くの細胞種において免疫反応を誘発するものと考えられていました。最近の研究では、実際に5’-三リン酸修飾のsgRNAが免疫反応誘発性を内在しており、ヒトやマウスの細胞において有害であることが示されています。一方、5’-三リン酸修飾がない化学合成sgRNAの場合は、細胞でのゲノム編集効率が優れていることが実証されています。このため、化学合成sgRNAが、CRISPRシステムによるゲノム編の最適な試薬として支持されてきています。
3. Kim et al. CRISPR RNAs trigger innate immune responses in human cells. Genome Res. 2018. 28: 367-373.
弊社では、sgRNAの5’-と3’-両末端から各3残基を2’-O methylおよびホスホロティオエート修飾しています。2’-O-Methylオリゴ修飾は、加水分解やヌクレアーゼに対する安定性を向上させるRNAアナログです。ホスホロティオエート(PS)修飾は、ヌクレオチド間の結合を変化させ、ヌクレアーゼに対する抵抗性を増強します。