哺乳動物細胞のタンパク質発現系では、タンパク質の適切なフォールディングや構築、さらにヒト様の翻訳後修飾が可能であることから、基礎/臨床研究や治療に使用するリコンビナントタンパク質の産生における主なシステムとして使用されています。この発現細胞を作製するための標準的な方法は、宿主細胞の転写、翻訳、分泌機能を利用することであり、細胞への遺伝子導入によりターゲットタンパク質やリコンビナント抗体を産生します。安定発現細胞作製の最終目的は、継代培養後も高い生産性が維持され、ターゲットタンパク質を特異的に産生する細胞株を構築することであり、これにより、生産規模のスケールアップや高い費用対効果の実現が可能になります。目的の達成には発現ベクター、細胞株のエンジニアリング、およびプロトコルの最適化が重要です。
研究用グレードと商業用グレードの作製工程全般は同じですが、製品として多くの違いがあります。研究用グレード安定発現細胞株には通常、細胞株に関する情報のドキュメントは最低限の付属となります。しかし、商業用グレード安定発現細胞株には、医薬品製造等で提出が求められる法的書類の作成を容易にするために必要な各種の情報も提供されます。
モノクローナル抗体医薬やリコンビナントタンパク質医薬などの生物製剤は、ヒトや哺乳動物の細胞株を培養して定常的に生産されます。通常、これらの医薬品は以下の工程により産生されます。
生物製剤やワクチン開発の初期段階において、最新のGMP(cGMP)に準拠したマスターセルバンクおよびワーキングセルバンクの構築は極めて重要であるため、研究用グレード細胞株は、生物学的製剤の製造には適していません。単一のクローン細胞から構築されるセルバンクは、不純物や外来性感染性生物の混在がないことが確認されており、ロット間差がなく一貫した品質であることが基盤となっています。
規制に準拠したマスターセルバンク(MCB)では、細胞の生存率、アイデンティティー、純度、安定性、細胞核学、腫瘍原性、無菌性:細菌や真菌汚染、マイコプラズマ、外来性ウイルス、種特異的なウイルス/レトロウイルス、などが検査されます。
弊社は、動物成分を含まない合成培地(AFCDM)での増殖に適合した浮遊細胞、CHO-K1を宿主とした商業用グレードのタンパク質発現細胞株作製サービスを提供しており、非臨床や臨床試験で使用可能なタンパク質産生に適しています。創薬開発の初期段階でこのサービスを利用して頂くことで、開発にかかる時間や費用を削減することができ、GMPに準拠した製造への移行も可能です。弊社では、Glutamine Synthetase-based expression technologyによりタンパク質高発現細胞株を産生しています。これらの細胞株に対しては、十分な特性評価が実施され、細胞系統に関する書類も完備されているために、規制当局への申請を簡素化することができます。
弊社は、国際的規制に準拠する臨床用あるいは商業用のタンパク質生産を実現させるために、お客様のパートナーとして安定発現細胞株バンクの構築をお手伝いします。