グルタミン合成酵素遺伝子を用いたタンパク質発現系の原理
グルタミン合成酵素遺伝子を用いたタンパク質発現系は、哺乳動物細胞を宿主とするリコンビナント抗体やタンパク質の産生に広く使用されています。この発現系は、グルタミン酸とアンモニウムイオンからグルタミンを合成するグルタミン合成酵素の発現に依存しています。多くの哺乳動物細胞は自身でグルタミンを産生することができないため、グルタミン合成酵素遺伝子をコードするベクターでトランスフェクションすることにより生存を維持します。グルタミンを産生する細胞は、グルタミン合成酵素阻害剤のメチオニンスルホキシミン(MSX)でグルタミン合成を抑制することで、ベクターによるグルタミン合成酵素発現で生存が維持されるターゲットタンパク質を高産生する細胞がセレクションされます。このように、グルタミン合成酵素による発現系では、遺伝子組換で産生されたグルタミン合成酵素の活性が細胞の維持およびリコンビナント遺伝子の発現促進に利用されます。
図1:グルタミン合成酵素遺伝子を用いたタンパク質発現の原理
グルタミン合成酵素遺伝子を用いたCHO細胞タンパク質発現系の特徴
グルタミン合成酵素遺伝子を用いたCHO細胞タンパク質発現系には複数の特長があり、その中でも生産性、迅速性、安定性の3点が特に重要です。
図2:生産性、迅速性、安定性は、この発現系を使用することで得られる重要な利点です。
グルタミン合成酵素遺伝子を用いたCHO細胞タンパク質発現系の生産性
この発現系により、ターゲットタンパク質の経済的生産プロセスを確立することが可能です。弊社のグルタミン合成酵素を用いたタンパク質発現系をご利用して頂くことで、高い産生能を有する発現細胞株を確実に得ることができます。最大産生レベルはターゲットタンパク質によって異なりますが、50~100 pcdの比生産速度で>5g/LのrAbを産生する発現細胞株を作製した実績があります。
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図3:単位体積当たりの生産性を最大化することで、特に製造において、費用対効果が向上します。
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図4:細胞プールから培養を拡大。最初の流加培養で>g/Lレベルのタンパク質発現を達成。2回目の流加培養で5g/L超のタンパク質を産生
グルタミン合成酵素遺伝子発現によるCHOタンパク質発現系の迅速性
細胞発現系を迅速に作製することは、プロジェクト全体を成功させるために極めて重要です。弊社のグルタミン合成酵素を用いたタンパク質発現系を利用することで、1次スクリーニングでの高発現細胞株を迅速に選択することができます。発現細胞の培養培地や作製工程を最適化することで、より高いタンパク質産生能の発現細胞株作製を可能にしています。これにより、GMPに適した発現細胞株の作製に要する時間が大幅に削減されます。さらに、弊社のCHO細胞を宿主としたグルタミン合成酵素タンパク質発現系は、動物成分を含まない合成培地での培養に適合しているため、トランスフェクション後に浮遊培養で増殖することも容易です。
Milestone | Weeks | ||||||||||||||||
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1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | |
Pool | |||||||||||||||||
Single Cell Clone | |||||||||||||||||
Batch Culture | |||||||||||||||||
Fed-Batch Culture |
図5:14~17週間でグラムレベルのmAbを産生
グルタミン合成酵素遺伝子を用いたCHO細胞タンパク質発現系の安定性
CHO細胞を宿主としたグルタミン合成酵素タンパク質発現系では、産生されるタンパク質の濃度、特性、および細胞増殖が安定しています。
図6:発現細胞株が、40回の継代培養を通して生細胞密度および産生抗体の力価が一貫していることを示しています。
グルタミン合成酵素遺伝子を用いたCHO細胞タンパク質発現系の概要
発現細胞株作製の最終目的は、ターゲットタンパク質やリコンビナント抗体(rAb)を特異的に産生する、高い生産性を有する発現細胞株を得ることです。このクローンにより、継代培養における一貫したレベルでのタンパク質生産、また生産規模のスケールアップや費用対効果を向上させることが可能になります。CHO細胞を宿主としたグルタミン合成酵素タンパク質発現系は、この目的を実現化するために有用です。このサービスの詳細はこちらをご覧ください。
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