バイスペシフィック抗体の概要
![Bispecific Antibody Overview quotation](/gsimages/genscript/get-a-free-system.jpg)
バイスペシフィック抗体(BsAb)は、2種類のユニークな個別抗原(または同じ抗原の異なるエピトープ)に同時に結合することが可能な抗体です。BsAbは主に、細胞障害性免疫エフェクター細胞を癌細胞に誘導し、 antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity (ADCC)やエフェクター細胞による細胞障害作用などにより、癌細胞に対する殺傷力を増強するために利用されています。作用機序の概要については以下の図をご覧ください。
![](/gsimages/genscript/bispecific_antibody_mechanism_of_action.jpg)
図1:バイスペシフィック抗体の作用機序
BsAbは2種類の異なる抗原に結合します。一方のアームが癌抗原に結合し、もう一方のアームがT細胞表面のCD3抗原決定基に結合します。このように、癌細胞とエフェクター細胞をクロスリンクすることでT細胞が近傍で活性化され、高い細胞障害性が得られます。
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バイスペシフィック抗体は、一般的なモノクローナル抗体とは異なり二重特異性を有しており、2種類の薬剤の働きを1つの抗体分子で担っているため、理論的には通常のmAbより優れた効果が期待できます。臨床用BsAb開発における対象疾患は、これまで癌治療および免疫疾患に焦点が当てられています。これらの開発の目的は、疾患の発生経路に関与する種々の分子を同時にターゲティングすることで、治療効果を増強することです。
バイスペシフィック抗体の構造と形態
BsAbは、Fc領域の有無により2種類に大別されます。遺伝子組換え技術により、今日では様々な形態のリコンビナントBsAbが作製されています。以下の図に代表的なものを示します。
![](/gsimages/genscript/bispecific_antibody_structure_and_formats.jpg?ver=02)
図2:最初のバイスペシフィック抗体は、モノクローナル抗体(mAb)や抗体Fab領域を化学的に架橋するか、またはクアドローマ技術により作製されました。その後、遺伝子操作を駆使したリコンビナント抗体作製技術により、親mAbの多様な重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を組み合わせた様々なバイスペシフィックリコンビナント抗体断片を創ることが可能になっています。例えば、scFv(single-chain variable fragment)、BsDb(bispecific diabody)、scBsDb(single-chain bispecific diabody)、scBsTaFv(single-chain bispecific tandem variable domain)、DNL-(Fab)3(dock-and-lock trivalent Fab)、sdAb(single-domain antibody)、BssdAb(bispecific single-domain antibody)などです。
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弊社では、バイスペシフィックIgGを含む様々な形態のIgG作製経験があります。バイスペシフィック抗体作製サービスの詳細についてはリコンビナント抗体service selection guideをご覧下さい。
バイスペシフィック抗体の産生
遺伝子組み換え技術により、同じ細胞株が発現する2種類のH鎖とL鎖を組み合わせてバイスペシフィックIgGを構築することができます。しかし、無作為に組み合わされることにより、機能しない抗体や、H鎖ホモダイマーが多く形成されます。この問題の解決法として、第2の結合部位(一本鎖抗体可変領域断片など)をH鎖やL鎖のN-やC-末端に融合させ、各抗原に対して2ヵ所の結合部位を有する四価BsAbを作製することが一般的です。LC-HCのミスペアリングやHCホモダイマー形成に対するいくつかの解決法を以下の表に例示します。
リコンビナントバイスペシフィック抗体の作製
フォーマット | スケマティック |
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Knobs-into-holes BsAb IgG二価のBsAb産生は、”knobs-into-holes”技術が開発されたことにより容易になりました。この技術では、2つのCH3ドメインに異なる変異を強制導入することで、非対称の重鎖ヘテロダイマーを形成させやすくします。特に、”knob”変異と”hole”変異を別々の重鎖に導入することで、効率的にヘテロダイマーを産生することができます。 |
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Ig-scFv fusion新規の抗原結合部位を完全長IgGに直接的に付加した四価抗体です。例えば、IgGのC-およびN-末端にそれぞれscFvを結合させたものです。 |
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Diabody-Fc fusionIgGのFab領域をダイアボディー(scFVからなるバイスペシフィック抗体)で置き換えたものです。 |
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Dual-Variable-Domain-IgG (DVD-IgG)単一特異性IgGのVHとVLのN-末端に、特異性が異なる抗体のVHとVLがリンカーにより接合されたものです。 |
GenScriptでの抗体産生
弊社では、IgG、IgA、IgM、バイスペシフィックIgG、scFv、BiScFv、さらにFc融合タンパク質など、様々な形態の抗体を産生することができます。長年培ってきた経験を活かすことで抗体産生を最適化し、高収率で優れた品質の抗体をお客様に提供することができます。以下のスキームは、一般的なIgG1の産生工程です。
一過性発現系によるIgG抗体産生スキーム
![Schematic of IgG Antibody Production Using Transient Expression at GenScript](/gsimages/genscript/schematic_IgG_antibody_figure.jpg)
IgG抗体産生の工程
- IgG抗体遺伝子の合成とクローニング:お客様の確認を得て、ターゲットの配列をデザインし合成。合成遺伝子を適当な発現ベクターにサブクローニング。
- 一過性トランスフェクションによるIgG抗体産生細胞の作製と培養:細胞を無血清培地で培養。重鎖と軽鎖の遺伝子を組み入れたプラスミドを細胞へ一過性トランスフェクション。培養開始5日後に培養上清を採取し、細胞の抗体発現レベルを確認するためにSDS-PAGEによる分析。
- IgG抗体の精製と品質検査:Protein Aカラムにより抗体タンパク質を精製。溶出画分をSDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングで分析し品質確認後、プールして保存用バッファー中に調製。
- 出荷品:pUC57に組み入れた合成遺伝子、コドン最適化した遺伝子シークエンスに関するレポート、指定された純度・量の精製抗体、QCデータ、総合レポート。
バイスペシフィックIgG抗体産生
![Bispecific IgG Production](/gsimages/genscript/bispecific_igg_production.jpg)
精製バイスペシフィックIgG抗体のSDS-PAGEの結果(左)と同じゲルのウェスタンブロッティング結果(右)
抗体医薬の協働探索および受託サービス
- Antibody Discovery:弊社は10年超にわたり抗体医薬の探索支援に関わっており、探索の初期フェーズにおいて様々なサービスを提供しています。例えば、抗体遺伝子の組換え操作により最大1010クローンの抗体ライブラリーを構築することで、目的の抗体探索を促進させることに貢献できます。
- Antibody Sequencing:弊社の最新シークエンシング技術により、お客様のモノクローナル抗体を迅速かつ確実にシークエンシングすることができます。
- Assays:弊社では細胞ベースの複数のADCC/CDC試験法を開発しており、独自のリコンビナントエフェクター細胞を使用してリード抗体医薬の有効性や薬効プロファイルを検討します。
- Antibody Engineering:弊社の遺伝子組換え抗体作製における広範な経験により、ヒト化抗体作製やアフィニティマチュレーションなど、様々なサービスを優れた品質で提供することができます。
- Antibody Production:弊社が有するリコンビナント抗体(rAb)産生に関する確立した専門技術により、包括的rAb作製サービスを提供することが可能になっています。このサービスでは、お客様の抗体医薬探索プログラムの各段階で、µg~gレベルの精製rAbを提供することができます。
- PK/PD Studyリード抗体医薬について、120種類を超える癌種や免疫疾患の in vivoでの有効性、PK/PD、バイオマーカーの各評価、および生物学的分析を行うことができます。また、Anti-idiotype Antibodyは、リード抗体医薬のPK/PDや免疫原性の試験を確実に実施する信頼できるサービスです。
- Antibody作製サービスも、リード抗体医薬のPK/PDや免疫原性試験のための強力なツールとして有用です。
- お客様の使用目的に最適なサービスを検討するために、Recombinant Antibody Service Selection Guideをご覧下さい。
ご質問等については弊社までご連絡下さい。